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中国(ちゅうごく)の神(かみ)の物語(ものがたり)「牛(うし)飼(か)いと織(おり)姫(ひめ)」

原(げん)案(あん):宋(そう) 湘(しょう)平(へい)

1.

昔々(むかしむかし)、天宮(てんきゅう)に、織姫(おりひめ)という美(うつく)しい娘(むすめ)がいました。織姫(おりひめ)は三(さん)姉妹(しまい)の末(すえ)っ子(こ)で、天宮(てんきゅう)の女王(じょおう)に特(とく)に可愛(かわい)がられていました。

2.

天宮(てんきゅう)には、千年(せんねん)に一(ひと)つだけ実(み)が成(な)るという「問心果(とうしんか)」があります。それはハートの形(かたち)をしていて、それを手(て)に入(い)れた人(ひと)たちは結(けっ)婚(こん)できると、言(い)い伝(つた)えられていました。

3.

ある日(ひ)、織(おり)姫(ひめ)はこの「問(とう)心(しん)果(か)」を、人間(にんげん)界(かい)に落(お)としてしまいました。「問(とう)心(しん)果(か)」は、天宮(てんきゅう)に一(いち)番(ばん)近(ちか)い「天(てん)尽(じん)頭(とう)」にある、木(き)の上(うえ)の鳥(とり)の巣(す)の中(なか)に落(お)ちました。

4.

何(なん)とか探(さが)さなくては・・・人間(にんげん)界(かい)に降(お)りてきた織(おり)姫(ひめ)は、そこで、ひとりの牛(うし)飼(か)いと出(で)会(あ)いました。
織(おり)姫(ひめ)と牛(うし)飼(か)いは、木(き)の上(うえ)の鳥(とり)の巣(す)の中(なか)にある「問(とう)心(しん)果(か)」を見(み)つけました。そして、二(ふた)人(り)は昔(むかし)からの言(い)い伝(つた)えどおりに、結(けっ)婚(こん)しました。

5.

織(おり)姫(ひめ)は天宮(てんきゅう)からもってきた「杼(ひ)」を使(つか)って、機(はた)を織(お)り、牛(うし)飼(か)いは牛(うし)を育(そだ)てました。やがて、男(おとこ)の子(こ)と女(おんな)の子(こ)が産(う)まれ、一(いっ)家(か)4人(にん)は貧(まず)しいけれど、幸(しあわ)せに暮(く)らしていました。

6.

ところが、それから3年(ねん)目(め)の七(しち)月(がつ)七(なの)日(か)、突(とつ)然(ぜん)、空(そら)が真(ま)っ暗(くら)になったかと思(おも)うと、雷鳴(らいめい)がとどろきわたりました。「織(おり)姫(ひめ)よ、天(てん)に戻(もど)れ!」「織(おり)姫(ひめ)よ、すぐ、天(てん)に戻(もど)れ!」天宮(てんきゅう)の女(じょ)王(おう)の叫(さけ)び声(ごえ)が響(ひび)いています。

7.

その声(こえ)を聞(き)いて、織(おり)姫(ひめ)は泣(な)く泣(な)く、天宮(てんきゅう)に昇(のぼ)って行(い)きました。遠(とお)ざかっていく織(おり)姫(ひめ)を見(み)て、牛(うし)飼(か)いと子(こ)どもたちは、大声(おおごえ)で泣(な)き叫(さけ)びました。「おかあさん~、おかあさん~」「織(おり)姫(ひめ)、行(い)かないでくれ~」

8.

牛(うし)飼(か)いと子(こ)どもたちが嘆(なげ)き悲(かな)しんでいると、牛(うし)の親(おや)子(こ)が近(ちか)づいてきました。年(とし)老(お)いた牛(うし)が言(い)いました。「牛(うし)飼(か)いよ、私(わたし)は神(かみ)につかわされて、人間(にんげん)の世(せ)界(かい)にやってきた。私(わたし)はまもなく、天(てん)に戻(もど)らなければならない」

9.

「子(こ)牛(うし)よ、私(わたし)が天(てん)に戻(もど)ったら、私(わたし)のヒヅメを割(わ)って、牛(うし)飼(か)い一(いっ)家(か)を助(たす)けてやるんだよ」と言(い)い残(のこ)すと、死(し)んでしまいました。子(こ)牛(うし)は言(い)われたとおり、年(とし)老(お)いた牛(うし)のヒヅメを割(わ)り、さらに自(じ)分(ぶん)の頭(あたま)を石(いし)臼(うす)に叩(たた)きつけました。

10.

次(つぎ)の瞬(しゅん)間(かん)、子(こ)牛(うし)の体(からだ)はみるみる絨(じゅう)毯(たん)のように大(おお)きくなり、金(きん)色(いろ)に輝(かがや)き始(はじ)めました。牛(うし)飼(か)いは急(いそ)いで子(こ)どもたちを抱(だ)きかかえ、その絨(じゅう)毯(たん)に飛(と)び乗(の)りました。絨(じゅう)毯(たん)は牛(うし)飼(か)いと子(こ)どもたちを乗(の)せて、雲海(うんかい)を渡(わた)り、織(おり)姫(ひめ)を追(お)いかけました。

11.

それを見(み)ていた、天宮(てんきゅう)の女(じょ)王(おう)は怒(いか)りに震(ふる)え、自(じ)分(ぶん)のかんざしを抜(ぬ)きとると、雲海(うんかい)に向(む)かって、ひとふりしました。

12.

すると、どうでしょう。あっという間(ま)に、織(おり)姫(ひめ)と、牛(うし)飼(か)いと子(こ)どもたちの間(あいだ)に、大(おお)きな川(かわ)ができてしまいました。もう少(すこ)しで追(お)いつきそうになったとき、織(おり)姫(ひめ)と牛(うし)飼(か)いたちは、また引(ひ)き離(はな)されてしまったのです。

13.

かわいそうに思(おも)ったカササギが、仲(なか)間(ま)を集(あつ)めて群(む)れとなり、その大(おお)きな天(あま)の川(がわ)に橋(はし)を架(か)けました。

14.

喜(よろこ)んだ牛(うし)飼(か)いと織(おり)姫(ひめ)は、急(いそ)いで走(はし)り出(だ)し、カササギの橋(はし)を渡(わた)って、会(あ)うことができたのです。

15.

それ以(い)来(らい)、年(ねん)に一(いち)度(ど)、七(しち)月(がつ)七(なの)日(か)は、牛(うし)飼(か)い一(いっ)家(か)と織(おり)姫(ひめ)が会(あ)える日(ひ)となりました。
この話(はなし)が伝(つた)えられて、七(しち)月(がつ)七(なの)日(か)は、すべての恋(こい)人(びと)同(どう)士(し)が逢(あ)える日(ひ)と、言(い)われるようになったのです。

16.

おくづけ
中国(ちゅうごく)の神(かみ)の物(もの)話(がたり)「牛(うし)飼(か)いと織(おり)姫(ひめ)」にほん語(ご)
原(げん)案(あん):宋(そう) 湘(しょう)平(へい)
絵(え):浦(うら)田(た)真(ま)理(り)子(こ)
日(に)本(ほん)語(ご)文(ぶん):にほんごの会(かい)くれよん 
朗(ろう)読(どく):塚(つか)崎(さき)美(み)津(つ)子(こ)
音楽(おんがく):秋(あき)山(やま)裕和(ひろかず)
企(き)画(かく):にほんごの会(かい)くれよん
制(せい)作(さく):多(た)言(げん)語(ご)絵(え)本(ほん)の会(かい)RAINBOW

17.

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