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エビの 腰(こし)が 曲(ま)がった わけ(日(に)本(ほん)の昔(むかし)話(ばなし))

みなさん、エビの 腰(こし)は 曲(ま)がって いますよね? 
でも 昔(むかし)は まっすぐ だったんですって。 
どうして 曲(ま)がっちゃったのかな? 
今(いま)から そのわけを お話(はなし)しますね。

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むかし むかし あるところに とても大(おお)きな カエルが いました。 
「ゲコッ ゲコッ どけ どけ チビども! ゲコッ ゲコッ」 
カエルは とても いばって いました。 
「ゲコッ ゲコッ 俺(おれ)さまは この世(よ)で いちばん でかいゲコ。 
そして 強(つよ)いゲコ。 そうだ 伊(い)勢(せ)まいりに 行(い)こうゲコ。」 
カエルは 伊(い)勢(せ)まいりに 出(で)かけました。

2

びよーん  べたん びよーん  べたん 
どんどん 行(い)くと やがて 広(ひろ)くて まっすぐな 道(みち)に 出(で)ました。 
「なんて りっぱな 道(みち)だゲコ。 よし この道(みち)を 行(い)こうゲコ」 
びよーん  べたん びよーん  べたん 
ところが とつぜん どこからか 大(おお)きな 声(こえ)が しました。 
「アタシの 背(せ)中(なか)に いるのは だぁれ~」

3

「うひゃぁ~」 
なんと 道(みち)かと 思(おも)ったのは 大(おお)きな 大(おお)きな ヘビの 背(せ)中(なか)でした。 
「だぁれ? あなたは?」 
カエルは ぶるぶる ふるえながら 答(こた)えました。 
「わ、わ わたしは この世(よ)で いちばん 大(おお)きな カエルですゲコ」 
「ほっほっほ…この世(よ)で いちばん 大(おお)きな カエル ですって? 
この世(よ)で いちばんの ちびガエルが⁈」 
「あなたさまの おっしゃる 通(とお)りですゲコ。 どうか わたしを 食(た)べないで くださいゲコ」 
「あなたなんか 小(ちい)さすぎて お腹(なか)の足(た)しにも ならないわ。 さっさと お行(ゆ)き」 
カエルは すたこら さっさと 逃(に)げ出(だ)しました。

4

「うっふっふ… アタシは この世(よ)で いちばん 大(おお)きな 生(い)き物(もの)よ。 
だって 自(じ)分(ぶん)で 自(じ)分(ぶん)の 尻尾(しっぽ)も 見(み)えない くらいですもの…。 
それに 強(つよ)いわ。 そうよ、伊(い)勢(せ)まいりに 行(い)くと しましょう」 
ヘビも 伊(い)勢(せ)まいりに 出(で)かけました。 
にょろ にょろ にょろにょろにょろ 
にょろ にょろ にょろにょろにょろ 
ところが とつぜん…

5

空(そら)が 真(ま)っ暗(くら)に なり 
風(かぜ)が びゅうびゅう ふきはじめました。 
「あれ~! 嵐(あらし)よ~ 飛(と)ばされるわ~」 
ところが それは 嵐(あらし)では なくて

6

大(おお)きな 大(おお)きな ワシの 羽(は)ばたきでした。 
「きゃぁ~」 
「なんじゃぁ? おまえは?」 
「アタシは この世(よ)で いちばん 大(おお)きな ヘビよ!」 
「はっはっは! この世(よ)で いちばん 大(おお)きな ヘビだと? 
この世(よ)で いちばんの ちびヘビが?!」
ヘビは くやしがりましたが 仕(し)方(かた)が ありません。 
すごすごと 逃(に)げだしました。

7

「はっはっは。 オレは この世(よ)で いちばん でかい 生(い)き物(もの)だ。 
なんせ オレが ちょっと 羽(は)ばたけば 嵐(あらし)が 起(お)きる くらいだからなぁ! 
そして 強(つよ)い! そうだ、伊(い)勢(せ)まいりに 行(い)くとしよう」 
ワシも 伊(い)勢(せ)まいりに 出(で)かけました。 
ばさっ ばさっ ばさっ ばさっ・・・
広(ひろ)い 広(ひろ)い 海(うみ)の 上(うえ)を 飛(と)んで いると、
海(うみ)の中(なか)に 柱(はしら)の ようなものが 見(み)えました。

8

「これは いい! ちょっと この上(うえ)で ひと休(やす)み」 
ところが とつぜん どこからか 声(こえ)が しました。
「ボクの ひげの さきに いるのは だ~れ!」

9

「うわぁ~」 
なんと 柱(はしら)だと 思(おも)ったのは、大(おお)きな 大(おお)きな エビの ひげでした。 
「君(きみ)は だれ?」 
「オレは この世(よ)で いちばん 大(おお)きな ワシだ」 
「あっはっは! この世(よ)で いちばん 大(おお)きな ワシだって? 
この世(よ)で いちばん 小(ちい)さな 君(きみ)が?」 
エビは ひげを ふるわせて 笑(わら)いました。 
そのはずみで、ワシは どこかに 飛(と)ばされて しまいました。

10

「あっはっは。 ボクは この世(よ)で いちばん 大(おお)きな 生(い)き物(もの)さ! 
そして 強(つよ)い! そうだ、伊(い)勢(せ)まいりに 行(い)こうっと!」 
エビも 伊(い)勢(せ)まいりに 出(で)かけました。 
びちっ びちっ びちっびちっびちっ 
びちっ びちっ びちっびちっびちっ 
どんどん 歩(ある)いて 行(い)くうちに、日(ひ)が 暮(く)れました。 
「ふぅ~  くたびれた~」

11

エビは ちょうどいい 穴(あな)を 見(み)つけると、その中(なか)に もぐりこみました。 
「今夜(こんや)は ここで、寝(ね)ようっと」 
そして ぐっすり 眠(ねむ)って しまいました。 

さて、朝(あさ)に なりました。 
とつぜん、穴(あな)の下(した)から 音(おと)が 響(ひび)いて きました。 
ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ザッバーン

12

とつぜん 穴(あな)から 水(みず)が ふきだして、エビを 空(そら)へと 吹(ふ)き飛(と)ばしました。 
「ひぇぇぇぇぇ~」

13

なんと その穴(あな)は くじらの 頭(あたま)の穴(あな)でした。 
エビは どんどん どんどん とばされて…

14

落(お)ちた ところは 岩(いわ)の上(うえ)。 
ドッスーン! 
「いたたたたたたた…」 
ひどく 腰(こし)を 打(う)って しまいました。 
それからと いう もの、エビの 腰(こし)は 曲(ま)がって しまったんですって。

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奥(おく)付(づけ)
「エビの腰(こし)が曲(ま)がったわけ」(日(に)本(ほん)の昔(むかし)話(ばなし))
文(ぶん)・絵(え)・朗(ろう)読(どく):片(かた)桐(ぎり)早(さ)織(おり)
音楽(おんがく):秋(あき)山(やま)裕和(ひろかず)
制(せい)作(さく):多(た)言(げん)語(ご)絵(え)本(ほん)の会(かい)RAINBOW

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